【基礎】人工呼吸器

呼吸回路の分類【熱線入り×熱線なし】【閉鎖式×開放式】

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人工呼吸器だけじゃなく、呼吸回路も色んなのありますね。

ゆー
ゆー
ユウ
ユウ

たしかに、商品の数はたくさんあります。成人用、小児用、新生児用とか含めると複雑ですが、通常使用する上では4組に分類されますよ。

呼吸回路は4組に分類される

畢竟するに呼吸回路の分類は、
材料2パターン、換気方式2パターンの、
4組に分けられます。

基本的には、4組に分けられて、
最近はさらに、付属の機能として、

呼吸回路内の水が蒸発するような材質で作られていたり、
呼吸回路内のガスの流れが双方向となるような、
特殊なタイプの商品も出ていますが、

大本の分類は、4組と考えて間違いはありません。

呼吸回路の材料2パターン「熱線入り」「熱線なし」

呼吸回路の材料による分類は、
「熱線入り」と「熱線なし」の
2パターンになります。

熱線というのは、
呼吸回路自体を温めるためのものです。

加温加湿器という、
人工呼吸器とはまた別の機械を用いて、
呼吸回路を温める熱線、

この熱線が入っているタイプと、
熱線がないタイプがあります。

熱線入り呼吸回路

熱線で呼吸回路自体を
温める理由は、
結露を防止するためです。

結露によって
呼吸回路内に水が貯まると、
様々な弊害が起きます。

水が患者さんの接続部まで流入すると窒息のリスク、

水が呼吸回路の断面を塞ぐように貯まると閉塞のリスク、

水は液体なので、呼吸回路内を移動することがあります。
移動するときに人工呼吸器から送られるガスにぶつかると、
患者さんの自発呼吸と勘違いしてしまうリスク、

これを総称した呼び方でミストリガーと言いますが、

ミストリガーすると患者さんに十分な呼吸のサポートができないリスク、
この状態を低換気と言います。

また、

人は運動をすると体温が上昇します。
体温が上がると、汗をかきます。
汗は体温を下げてくれる役割があります。

これと同じようなことも起きえます。

呼吸回路内に水があると、
呼吸回路内の温度を下げてしまいます。

そもそも湿度を上げるために、
水を温めて、温度を上げていますので、

本末転倒ですが、
加湿不足にもなります。

このように呼吸回路内に水があると、
呼吸管理に良くないことだらけですので、
結露しないような対策として、
熱線入りの呼吸回路は多く使用されます。

熱線入り呼吸回路のデメリットとしては、
加温加湿器がないと呼吸回路を温められないので、
電源供給がない場面では効果はありません。

また、

熱線は断線してしまうと熱を伝導させることができないので、
繰り返しの使用、長期間の使用には不向きとなります。

さらに、

熱線入りの呼吸回路にもまた、熱線を
内側に巻いてあるか、
外側に巻いてあるかなど、
たくさんの商品があります。

熱線なし呼吸回路

熱線なし呼吸回路は、
短期間・一時的に人工呼吸器を使用する時、
加温加湿器ではなく、保湿の機能をもった
人工鼻を使用する場合に選択されます。

ただし、

熱線なし呼吸回路でも、
加温加湿器を使用することはあります。

その場合、
結露により水が貯留しやすいので、

「ウォータートラップ」という、

水を貯めておくカップ状の部品を、
セットで付けることが多いです。

ウォータートラップについては、
取り扱いが注意です。

熱線なしの呼吸回路は、
繰り返し使用できる
リユースタイプで有利です。

よって、

慢性的に人工呼吸器を使用する場面、
神経・筋疾患や重症心身障害児の方々などの、
在宅人工呼吸療法(HMV)を導入している方々に多く用いられます。

呼吸回路の換気方式2パターン「閉鎖式」「開放式」

呼吸回路の換気方式による分類は、
「閉鎖式」と「開放式」の
2パターンになります。

呼吸回路は、
患者さんと人工呼吸器を繋ぐものです。
この間に穴があるか、ないかです。

穴を設けず密閉した状態で換気をするタイプが、
「閉鎖式」になります。

閉鎖式は、
弁(バルブ)の開け閉めで、
呼吸の吸う時間と吐く時間を決めるので、
「弁(バルブ)式」とも表現します。

「開放式」は穴を設けるタイプです。
穴があるとそこから漏れます。
(リークする。)

穴は呼気を排出するための
リークポートを目的としています。

開放式の換気方式は、
わざとリークさせる方式なので、
「リーク式」とも表現します。

[補足]わざとリークさせている漏れのことを、専門用語で、
「インテンショナルリーク(意図的なリーク)」といいます。

閉鎖式(バルブ式)

一般的には、
閉鎖式(バルブ式)の換気方式で、
人工呼吸器管理は行われます。

基本的にリークがない方式なので、
設定した空気(ガス)の量または圧が、
呼吸回路内を流れます。

このメリットは、

呼吸管理のし易さ、
設定に対して実測の正確性、
という面が有利
といえます。

患者さんの肺(気道)に加わる圧力は、
低い方が良いのですが、

リークがない方が、
人工呼吸器から送気するガスが、
必要な十分の量や圧力で済みます。

リークがあると、
リークする分の量を上乗せでガスを送らないといけません。

また、

萎んでしまった肺を開くために、
通常よりあえて高い圧力を加える場合があります。

「肺リクルートメント(肺開存手技)」といいます。

その場合においても、

肺に送るガスの圧力の、
正確性が求められますので、

それらの点で、
閉鎖式(バルブ式)換気が優位です。

開放式(リーク式)

専用のマスクを用いて(NPPV)
人工呼吸器を使用する場合には、
開放式(リーク式)の換気方式が主流です。

理由は、

患者さんとマスクとの接触面で、
必ずリークがあるからです。

現在は多くの人工呼吸器に、
「リーク補正機能」が搭載されていますが、

リークを補正する換気に特化した、
NPPV専用機という人工呼吸器があります。

このNPPV専用機では、
リークありきの開放式(リーク式)換気方式が選択されます。

そのメリットは、
呼吸回路が簡便になることです。
最小本数は1本にすることもできます。

呼吸回路の構成が複雑だと、
接続の間違いが起きやすくなりますので、
不慣れな非医療従事者の方々には有利と言えます。

よって、

専用マスクでの人工呼吸療法(NPPV)でなくても、
在宅で人工呼吸器を使用する場合(HMV)にも
よく選択される換気方式です。

まとめ

✔呼吸回路は材料2パターン×換気方式2パターン=4組に分類される。

① 熱線入り呼吸回路、閉鎖式換気方式
② 熱線なし呼吸回路、閉鎖式換気方式
③ 熱線入り呼吸回路、開放式換気方式
④ 熱線なし呼吸回路、開放式換気方式
✔4組は疾患や環境・状況により使い分ける。

I appreciate your reading the article all the way through.

  • この記事を書いた人

ユウ

人工呼吸管理が好きな臨床工学技士(ME; CE)。十数年の職務経験で、民間病院から県立、国立病院機構の急性期から慢性期医療に従事。東日本大震災の衝撃から一念発起し、米国呼吸療法士プログラムの受けるべく留学するも資金繰りに失敗して途中帰国。でも求めた知識より一緒に過ごしたグローバルかつ多職種の友達が何よりの誇り。趣味は写真。マイブームはNFT。医療・健康など少しでも役に立つ発信を心掛けます。よろしくお願いいたします。

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