
ゆーさん、テスト肺はどんな時に使いますか?
ウィーニング(離脱)するときに使いますよー。


一時的に一定時間、人工呼吸器を外すときですね。他にも使う時がありますので、解説させて頂きますね。
テスト肺を常に人工呼吸器の側に置いておく3つの目的と使い方
畢竟するに、
① 人工呼吸器本体と呼吸回路の動作チェック
② 急変対応DOPEの「E」
③ 人工呼吸器「開始忘れ」の事故防止対策
【概要】
① 人工呼吸器本体と呼吸回路の動作チェック
定期交換時などに以前の状態と比べて変わりないか、通常の動作をしているのかを確認します。
② 急変対応DOPEの「E」
患者さんが急変したときに行うDOPEで、人工呼吸器側に問題があるのか、患者さん生体側の状態が悪化したのかを判断します。
③ 人工呼吸器「開始忘れ」の事故防止対策
一時的に呼吸回路を外した際、不必要にアラームが鳴ってしまうのを防ぐのに使います。
アラームが鳴るのを防ぐために人工呼吸器の電源を切り、その後電源を入れ忘れてしまったという事故が全国各地で度々起きています。中には、死亡事故もあります。
慢性期の患者さんであれば入浴時など、急性期の患者さんにも考えられるのは検査時(別の人工呼吸器に切り替える)など、一時的にウィーニング(離脱)する場合では“ランニング”の目的も併せ持ちます。
[aside type="normal"]【補足】“ランニング”とは、人が準備運動やストレッチせずに急に走り出すと、肉離れなど怪我をするリスクが上がるのと同じように、機械にも同じようなことがいわれています。
機械も急に複雑な動作をさせると負担になるので、これから使うことがわかっている場合は、少し前から運転させておくということを行います。[/aside]

臨床工学技士としては、機械の修理後や点検時に、長時間稼働させても異常なく使用できるか、何か問題点が浮き彫りにならないかなどの確認としても“ランニング”を行うことがあります。
人工呼吸器本体と呼吸回路の動作チェック
テスト肺はその名の通り、人体の肺を(簡易的に)模擬しています。
患者さんに付ける前に、人工呼吸器の動作や呼吸回路の状態をテスト・点検するのに用いられます。
テスト肺を押すことで、トリガー(自発呼吸の検知)の確認や各種アラームが鳴るかどうかのチェックもできます。
人工呼吸器本体や呼吸回路は定期的に交換することがありますが、
緊急的に交換することもあります。
機器本体の不具合や呼吸回路の破損など不定期の交換にすぐ対応できるように、
それら物品の予備は須く常備しておきますが、
交換した後、テスト肺を付けて動作の確認を行うことが安全使用の担保となります。
急変対応DOPEの「E」
チューブのずれ (Displacement of the tube) | チューブの気管外へのずれ、左右の主気管支に達してしまうなど。 |
チューブの閉塞 (Obstruction of the tube) | 分泌物、血液、膿汁, または異物、チューブのねじれなど。 |
気胸 (Pneumothorax) | ・単純性気胸(SpO2の突然の低下、胸郭拡張減少、病変側の呼吸音減弱) ・緊張性気胸(上記に加え低血圧や心拍出量の減少が著名な場合あり。通常、気管が病変側から離れる方向に偏位) |
機器の不具合 (Equipment) | ・呼吸回路の外れや亀裂などのリーク ・電源供給の停止 ・機器本体の電磁弁故障 など |
人工呼吸器管理下の患者さんが急変したときに、
その対応をする上で疑うべき原因の4点の頭文字をとりDOPE(ドープ)と呼びます。
まず用手換気に切り替えます。
まず機器側と生体側とどちらの問題なのかを判断します。
所見ですぐに原因が明らかであればいいのですが、必ずしもそのような状況であるとは限らないので、可能性を1つひとつ排除していきます。
用手換気に切り替えて、生体側はモニタ機器等も用いてバイタルをみます。
人工呼吸器はテスト肺を付けて、アラームが鳴らないか、設定に対しての換気が正常動作をしているかを確認します。
この時点で生体側は回復し、人工呼吸器に異常が認められたら、
もしくは人工呼吸器の不具合が見当たらず、再度患者に装着したとき同様の急変が起こるようならば、人工呼吸器側に問題があると判断します。
状態によっては再現性が薄かったり、異常があっても必ずしも人工呼吸器のアラームが鳴るとは限らないので、焦らずに対処されたいところです。
生体側は問題なく、機器側の問題の原因が特定できない場合に対処することは、
呼吸回路を交換するか、人工呼吸器本体を交換するかです。
どちらの場合においても交換前後で変化があったか、改善が認められたか、テスト肺を使用して動作を確認することが重要です。
人工呼吸器「開始忘れ」の事故防止対策
アラームが鳴りっぱなしになってしまうため、一度電源を切った。
その後電源を入れ忘れてしまい、患者さんは人工呼吸器からの空気(ガス)が送られてこないことで死亡してしまった。…
外部リンク:弁護士谷直樹/医療事件のみを取り扱う法律事務所のブログ
このような人工呼吸器の「開始忘れ」の事故が全国で度々起きています。
類似事例として「スタンバイモード」に関する、
公益財団法人 日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業の
「医療安全情報」が2度も出されています。


「準備状態で稼働はしていない」スタンバイモードに対しての警鐘です。
アラームを鳴らさないようにするために、
「電源を切る」ことをすると、
「電源を入れる」というその後のアクションが増えるので、
同じ意図でアラームを鳴らさないようにするなら、
テスト肺を付けて、稼働させておく。
テスト肺に付けても
その後、呼吸回路を患者さんに付け忘れてしまったら、
アラームが鳴らないから事故が起きるではないか、
という意見もありますが、
それは電源を切った場合にも同じことが言えますので、
その後のアクションを増やさないようにするために、テスト肺につないでおいた方がよいでしょう。
また、吸引など短い時間であれば、
電源を切らず、テスト肺にも付けないことをおすすめします。
アラームは発生しますが、
“事前消音”機能がある人工呼吸器なら、呼吸回路を外す前にアラーム消音を押しておくことで一定時間(約1分)アラーム音は鳴りません。
「アラームが鳴ってしまうから・・・」行うことですが、
×「電源を切る行為自体やスタンバイモード自体が、アラームが鳴らないから良くない」わけではありません。
×「テスト肺に付けること自体が、アラームが鳴らないから良くない」わけではありません。
△「処置・ケアのため一時的に人工呼吸器を外し、その後患者さんに付け忘れてしまったことが良くない」…人間誰でも忘れる生き物ですので、
○「患者さんに付けたかを確認することを怠ったことが良くなかった」
医療安全情報の総合評価部会の意見でも記述あるように、
「人工呼吸器を装着する際、換気が行われていることを胸郭の動きに基づいて確認する。」ことが大事であるということですね。
テスト肺につなぐと水浸しになって細菌繁殖の温床になるから良くない!?
感染問題から良くないことです。
なので、理由あって呼吸回路を外すときは、
・アラーム鳴ってしまっても何にも付けない方がいい。
・電源を切るか、スタンバイモードにする方がいい。
という意見あるかと思いますが、
人工呼吸器の電源を切らなくても、
加温加湿器の電源を切れば、
テスト肺が水浸しになることはありません。

しかし今度は、患者さんに人工呼吸器を付けるときに加温加湿器の電源を入れ忘れるリスクが増えますので、注意が必要ですね。
まとめ

②急変対応DOPEの「E」
③人工呼吸器「開始忘れ」の事故防止対策
I appreciate your reading the article all the way through.