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シリンジポンプを使うときに忘れてはいけない1つの手技【必須知識】

シリンジポンプを使うときに忘れてはいけない1つの手技

シリンジポンプは、これだけ覚えておけば心配ないです!保存版です!

医療機器は日々開発技術が進歩しており、安全を担保するような機構や便利な機能がどんどん搭載され、現代の医療を支える不可欠なツールとなっています。

しかし、使う医療者が理解して利用できていないと、機器本来のパフォーマンスが発揮されないばかりか、ヒューマンエラーによって患者さんを危険に晒してしまうことも起こりえます。

ただ、正しい知識をもって、正しく使えば、非常に便利な味方となります。

今回はシリンジポンプです。施設によっては使う頻度が少ないために、急遽使うときに戸惑ってしまうかもしれません。

この記事では押さえておくべきポイントだけをまとめておりますので、知識の振り返りにご利用ください。

「早送り」ボタンでプライミングする!

シリンジポンプ操作の流れ

シリンジポンプの全体の操作の流れは上記の図の通りです。

シリンジをセットして、流量を設定して「開始」ボタンを押す前に、忘れてはいけない操作があります。

「早送り」ボタンを押して、すき間を埋めることです。

すき間は、シリンジとシリンジポンプとの間に、2箇所あります。

①シリンジのフランジ(つば)と、シリンジポンプのスリットの間
②シリンジの押し子と、シリンジポンプのスライダーの間

肉間ではわずかな「すき間」かもしれませんが、シリンジポンプは1時間に1mLとか5mLなど少しずつ注入するための機械です。


少しずつ進むスライダーが、押し子にたどり着くまでに何時間もかかる場合があります。

特に、疼痛緩和のために小型(微量)のシリンジポンプを使うときは、流量を小数点以下の値に設定することもあります。

すき間が埋まるまでは、患者さんに注入されません。

シリンジポンプは、流量を設定して「開始」ボタンを押す前に、シリンジとシリンジポンプとのすき間を埋めておかないと、患者さんに投与する薬液などが何時間も注入されず、場合によっては深刻な状態を引き起こすリスクがあります。

シリンジポンプを正しく使うためには、すき間を埋める必要があり、そのためにプライミングの際に「早送り」ボタンを利用します。

シリンジポンプ-早送り
引用「ポンプ。リスクマネージメント通信No.8」, TERUMO

この操作は、既存するすべてシリンジポンプで必要な手技です。

一部その必要がないと謳う機種もあるようですが、シリンジポンプのシェアを考慮して例外と認識しておくのが無難です。また必要なく感じられても、機械的な操作によってすき間を埋めることが取扱説明書にも記載された事項なので、基礎的な手技として行うことが求められます。

また「早送り」ボタンを押してプライミングすることで、フランジをスリットに入れられているか、スライダーフックがきちんと挟めているか、異常の場合にアラームが鳴ることで気づけたりもするので有効です。

シリンジ装着
引用「ポンプ。リスクマネージメント通信No.8」, TERUMO
シリンジ装着2
引用「ポンプ。リスクマネージメント通信No.8」, TERUMO

「積算クリア」も忘れずに!

「早送り」ボタンを押すと、押した間のボーラス量が積算値としてカウントされます。

流量を設定して「開始」ボタンを押して注入を始める前に、「積算クリア」を押してプライミング時の積算をゼロにすると良いです。

シリンジサイズと「早送り」流量

シリンジサイズと早送り流量
シリンジサイズと早送り流量

高粘度の薬液を細いルートで「早送り」する場合​、閉塞していなくても閉塞アラームが鳴りやすい傾向があります​

閉塞アラームが鳴ってしまう場合は「早送り」ボタンを押さず、150mL/h以下の流量で送液して、すき間を埋めれば問題ないです。​

余談ですが「停止/消音」ボタンを押しながらダイヤルを回すと早く設定流量を上げることができます。治療ではあまり使う頻度は少ないと思いますが、臨床工学技士は点検のときにけっこう使います。知っていると便利です。

各施設での方針にもよります。安全上あえてこの操作ができないように設定している場合もあります。当該機種以外のシリンジポンプで同じように動作するとも限りません。

【上級編】準備と使用中の安全な環境作り

「早送り」ボタンを押してプライミングすることは、教えられないとなかなか気づけないことでありながら、知らないと必ず起きてしまう再現性の高いミスです。

次に挙げることは、正常な状態で使えていれば起きないミスですが、知っていれば手技の意味を理解できて、トラブルが起きた際にも落ち着いて対処できるので、定着させておきたい知識です。

【準備】患者さんと同じ高さに設置する【サイフォニング現象】

シリンジポンプを準備するときは、患者さんの刺入部と同じ高さに合わせて、点滴スタンドにつけます。

その理由は、サイフォニング現象です。

ここでのサイフォニング現象とは、落差(重力)によって急速注入されてしまうことをいいます。

サイフォニング現象
引用「ポンプ。リスクマネージメント通信No.8」, TERUMO

シリンジポンプを患者さんの刺入部より高い位置に設置して、押し子がスライダーに固定されていないと、落差(高低差)によってシリンジ内の薬液などが急速注入されてしまいます。

高低差が大きいほど、注入されるスピードが速くなります。

押し子がスライダーに固定されていれば起きない現象ですが、シリンジポンプが物理的に破損していることできちんと押し子を保持できていなかったり、電源を入れる前にシリンジをセットして不完全に装着してしまった場合はアラームは鳴らないので、固定されていない状態に気づけない、ということは起こりえます。

なので、シリンジポンプを落してしまった場合に見た目は壊れていなさそうでも、一度正常に動作するか点検は必要ですし、シリンジポンプを準備するときに患者さんと同じ高さに設置したら、まず電源を入れる。その後にシリンジをセットする、という順序がより安全に使用する上で大事な手技となります。

実際の臨床現場では、一人の患者さんに2つも3つもシリンジポンプを使うことはありますので、すべてを患者さんと同じ高さに設置することはかなわないこともあると思いますが、サイフォニング現象という知識を頭に入れておいて、リスクを引き起こさない準備と環境作りをすることが求められていると思います。

【使用中】注入中は刺入部を確認する【アラームを過信しない】

シリンジポンプは、セットしたシリンジが機械的に問題なく作動しているかを判断することはできます。しかし、

シリンジポンプは、患者さんに正しく薬液が注入中されているかの判断はできません。

刺入部から針が抜けてしまっていたり、血管外漏出を検出することはできません。

刺入部でのトラブル対処が遅れると、コンパートメント症候群を合併するなどのリスクがあります。

シリンジポンプを使用中にアラームが鳴らないからといって、何も問題ないと安心してしまうのは危険です。アラームを過信してはいけません。

定期的に患者さんのもとに点検しに訪れて、シリンジポンプの動作だけでなく、刺入部が腫れや液漏れがないか確認することも忘れずにチェックします。

血管外漏出は検出できない
引用「ポンプ。リスクマネージメント通信No.8」, TERUMO

逆に、閉塞検知アラームは搭載されているので「詰まり」は機械に任せてよいか?というと、やはりアラームの過信は禁物です。

流量や設定した閉塞検知レベルにより変動はありますが、詰まりがあってもすぐにアラームが鳴るわけではありません。

シリンジポンプ-アラームに頼らない
引用「協会ニュース 医療・看護安全管理情報No.10」社団法人日本看護協会 医療・看護安全対策室, 2003年1月15日

画像は日本看護協会の「医療・看護安全管理情報No.10」より引用したものですが、シリンジポンプの世界シェア過半数を占めているテルモ社のデータです。日本の総合病院で多く使用されているモデルのものです。後継機種においても基本的な操作方法や性能自体は変わりありません。

表をみると、LMHの閉塞検知レベルの設定にもよりますが、50mLシリンジに1mの延長チューブ(内容積1.0mL)を接続して先端が閉塞した時、閉塞警報が鳴るまでの時間​は、早くても

流量1mLの場合は70分、流量5mLの場合は15分、閉塞アラームが鳴るまで時間がかかります。

実際に「詰まり」が起きてから、アラームが鳴るまでにディレイがあります。

よって、アラームに頼らずに目視でもきちんと注入されているか確認することが大事です。

もちろん機械が故障している場合は、本来エラーが起きたとき鳴るはずのアラームが鳴らないかもしれません。もし落としてしまったり、ぶつけてしまった場合は、見た目で問題なさそうでも、ひび割れ箇所があったり内部の部品が外れてしまったりなど故障している場合があるので、専門知識をもった院内の臨床工学技士に連絡することをお勧めします。

まとめ

「早送り」ボタンを押してプライミングする
Why? ⇒ Ans. すき間埋め

患者さんと同じ高さに設置する
Why? ⇒ Ans. サイフォニング現象

注入中は刺入部を確認する
Why? ⇒ Ans. 液漏れでアラームは鳴らない

I appreciate your reading the article all the way through.

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