
青森の病院で人工呼吸器の回路の接続外れ事故の報道がありましたね。
アラームには気付いていたみたいですね。


報道では「誰かが対応すると思い込み、すぐに対応しなかった」とありますね。
アラームが鳴ってから対応が20分後で脳に後遺症が残ってしまったのですね。


再発防止策としてSpO2モニタのアラーム削減が挙げられていますので、今回はそんなお話をします。呼吸器については下記参照願います。
[内部リンク]
人工呼吸器のトラブル!確認するたった1つのこと【アラーム対応】
[関連書籍]
人工呼吸管理は回路が6割: 急性期から慢性期すべての目的に共通する知識
[外部リンク]
・NHK NEWS WEB『人工呼吸器外れ難病女性に後遺症』
・毎日新聞社『呼吸器外れ一時心肺停止 処置遅れ70代患者に後遺症 昨年11月、青森の病院』
経皮的動脈血酸素飽和度測定装置交換時や体動によるアラームを減らす設定とすること等、生体モニターの設定項目に関して医療安全マニュアルを改訂しました。
引用:独立行政法人国立病院機構青森病院ホームページ『人工呼吸器回路の接続トラブルに起因した心肺停止の医療事故について』, 2020年12月24日(最終閲覧日:2020年12月29日)https://aomori.hosp.go.jp/about/kango_00017.html
人工呼吸器を装着されている患者さんは、容態を客観的に評価することとモニタリングするためにSpO2モニタ(パルスオキシメータ)を付けます。
人工呼吸器のアラームもですがSpO2モニタも必要なときにだけ鳴らなければ、オオカミ少年化、アラーム疲労といった状態になってしまいます。
「アラームが鳴っていることが当たり前」
そんな状況になってしまい、対応が遅れてしまうことや対応に追われて疲れてしまうということに繋がり、危険です。
モニタのアラーム最適化のため、すでに取り組まれている例をお伝えします。
プローブ固定の工夫(送信機側)
SpO2と呼ばれる血液中の酸素の具合を知るための指標は、日本で開発されて痛みを伴わない非侵襲的なモニタ機器として普及しています。
簡易的なものは家庭用として安価で買うことができます。コロナ問題で話題となったため、認知度は高まっているかもしれません。
新型コロナウイルスの感染は、SpO2だけでは判断できません。現在は医療機関や療養施設への安定供給のため、一般家庭用に体温計と同じレベルでの購入は控えていただくという報道もありましたね。
[外部リンク]
・NHK NEWS WEB『血液中の酸素濃度測定機器「一般家庭の購入控えて」新型コロナ』
SpO2モニタ(パルスオキシメータ)は、非侵襲性であるメリットの反面、測定値に影響を及ぼすいくつかの要因があります。
その一つが体動です。
理由は、測定原理にあります。
脈を利用しています。
動脈血の特徴が「脈がある」ことですので、測定する部位を動かすと容易に値が変化してしまいます。
極力、測定部位が動かないようにする工夫が必要です。
工夫の一例として、軽度屈曲部位で2点固定が挙げられます。
センサ部分をテープで巻くことだけでなく、そこから近い関節部分に少し余裕を持たせた上で固定します。
多少のズレによって、その度に脈波形(プレスチモグラフ)がブレなければ良好です。
これは、センサープローブの断線の対策にもなりますので有効です。
SpO2遅延時間(セントラルモニタ側)
病院内では、1フロア広い病棟もあります。
アラームが聞こえないことや病室まで行かないとモニタの値が確認できないと、患者さんの容態変化に十分に対応できません。
よって、無線でSpO2データ等を受信するセントラルモニタという医療機器をスタッフステーションに置くことが多いです。
リアルタイムでモニタリングすることができますし、波形を見やすくしたり、アラーム値を個別にも設定できます。
急性期よりも慢性期の患者さんに向いている設定項目で、かつマイナーかもしれませんが。
「SpO2遅延時間」という設定項目があります。
先述のとおり、SpO2は体動などさまざまな因子に影響します。
実際には容態が悪化していないにもかかわらず、誤った数値によってアラームが鳴ってしまっては支障が出ますので、一時的な数値の変化ではアラームが鳴らないような設定項目になります。
異常値が設定した一定時間を持続したときに、遅れたようにアラームを鳴らします。
ずーっと体が動いているのかもしれませんが、それはそれで状態を確認した方がよいかもしれませんし、数値と実際の患者さんの容態変化との信頼性が高い、だろうという項目です。
そもそも、とくに基礎疾患がなければSpO2は急激に変化する値ではありません。
よって、装着する患者さんの疾患によっても、設定するのかを検討する必要はあります。
また、日本光電社独自の設定項目であり、さらにWEP-4000シリーズ以下には機能がありません。
固定法と比べて一般的ではありませんが、医療安全の意識が高く、凝ってカスタマイズして工夫している病院もあると思います。
連携システムの利用
病院ではセントラルモニタと他の機器と連動してモニタリングやアラームを円滑にするシステムがあります。
ICUのような集中ケアの場所よりも一般病棟や慢性期の病棟に向いているかもしれません。
患者さん個々のアラームのパラメータ上下限値を適切に設定することと並行してシステムを導入することでトリアージ(治療の優先順位の決定・対応)の質が上がることが考えられます。
アラームが鳴ったときにスタッフステーションにいるとは限りません。
他の患者さんのケア中かもしれません。廊下を移動中かもしれません。アラームが鳴ったときにわざわざスタッフステーションまで戻ってから、アラームの内容を確認するのがタイムロスになり、それが致命的になることも可能性としてゼロではありません。
疾患の性質上、必要に応じてシステムを取り入れている病院はあります。
ナースコール継続時間
セントラルモニタとナースコールが連動できたりします。
ナースコール自体をスタッフステーション内の親機だけでなく、PHSを携帯してコールを取れるようなシステムもあります。
その場合はPHSで患者さん個々のセントラルモニタで鳴っているアラームを確認することができます。(セントラルモニタから鳴っている実際の音を止めることはできません)
病棟の構造とアクセスポイントの設置場所などで、アラームを受話するまでの遅れが出るなど、システムの運用には知識とトレーニングは必須です。
そして、先述のSpO2遅延時間と似ている機能ではありますが「ナースコール継続時間」という項目を設定できます。
セントラルモニタで鳴ったアラームが設定した時間、継続したらナースコールに連動してアラーム情報を転送する機能です。
これもまた、一過性に鳴ったアラームに対しての線引きをする設定です。
有用かどうかは使い方次第です。
そして、筆者が日本光電推しなわけではありませんが、こちらも設定できる項目として確認している機種は、WEP-5000シリーズ以上のクラスになります。
モバイル端末による遠隔監視システムの導入
iPadに専用アプリをダウンロードしてセントラルモニタの画面を見ることができます。
このアプリは、日本光電さんだけです。
[外部リンク]
モバイルビューアー「ViTrac」
アラームを知らせるだけでなく、ほぼリアルタイムのバイタル情報をモニタリングできます。
アラームが鳴ったときに、上下限値を越えただけでなく、実際の数値を確認できるので、同時に複数のアラームが発生したときなど、より正確なトリアージ(治療の優先順位の決定・対応)が望めます。
や端末を複数枚使用する場合に患者さんの選択を区分けするなど、使い方次第で有用なツールになります。
注意点は、バッテリーの管理になるかと思います。充電時間とモバイルバッテリーの併用など運用が要になることが予想されます。
まとめ

✔SpO2遅延時間などセントラルモニタの設定を工夫する
✔連動システムの運用を視野に入れる
I appreciate your reading the article all the way through.