エッセイ

仮面ライダーBLACK SUNの感想【Amazon Prime Video】

KamenRiderBLACKSUN

久々に、人工呼吸器でも臨床工学技士でも何でもない話です。需要はないと思うが笑。いや、以前に職場では真面目な仕事の話より雑談の方がスタッフや患者さんから喜ばれた気がする。そんなことを思い出しながら。

どこかの広告で予告編を見たときに、震えたね。仮面ライダーBLACKをリメイクするのかと。5月にDisney+で「オビワンケノービ」が配信されたときも歓喜した。スターウォーズは子どもの頃からのファンで、一番好きなキャラクターで、今作はオビワンが再起するところが素晴らしかった。最初の枯れ具合が良かった。

仮面ライダーBLACKは、ライダーシリーズで一番好きな作品だ。子どもの頃に見ていた。おそらく再放送だったのだろうけど。石ノ森章太郎による原点回帰がテーマだったらしいことは後に知るけれど、造形や戦いがシンプルな感じが好きだった。ただ、平成ライダーへと繋がる新しい試みもあって、大人になってから見返してしまうくらいに印象的だった。

10代後半だったか、暇だったんでしょう、わざわざTSUTAYAにDVDをレンタルしに行った気がする。なんか見ちゃったことがあった。何が画期的だったか、それは敵が、敵の方がカッコよかったところが一つ挙げられる。仮面ライダーVS仮面ライダーを初めて、しっかり描いた作品だといわれる。シャドームーンだ。

シャドームーン、名前がイイ。造形デザインはカッコいいし、強そう。赤い剣を持っちゃってる感じもカッコよかった。とりあえず敵だから許される武器の所持。後に仮面ライダーBLACKもRXのときに使い始めるけれど、シャドームーンで手応えがあったんだろうなと思う。ライダー対決の成功も平成ライダーへと受け継がれる。

ただ、個人的には、それらの試みより、社会問題を盛り込んでシリアスなストーリーを描いたところが好きだった。環境破壊だ。緑の木々が減り、海水は工業・生活用水で汚れ、二酸化炭素の排出で温暖化が進み、地球は、私たちはこのままでいいのか、そんな問題提起が裏テーマにあった。

主題歌も好きだった。日本ってアニソンをもっと世界に発信した方がいいんじゃないか、と急に言ってみる笑。オープニングの歌のイントロはテンション爆上がりです。歌詞もストレートでサイコーでございます。そして、エンディングが子どもの頃に聴いてめちゃくちゃ印象的だった。哀しいです。歌詞が、環境というか時代について歌っている。子ども向けとは思えない。この辺りも、平成ライダーが母親にも見てもらえるようにという視点を受け継いでいると思う。このストーリーデザインが、大人になってからも見たくさせるんだと思う。だからこのリメイクに沸いたのだ。

私はこどもの頃から環境問題に興味があった。だからといって今何か取り組んでいることがあるかというと、何も誇れることはしていないのだけれど。中学生の頃は森林保全のために間伐という作業体験をしたりとか、今はヴィーガンの概念を知って、なるべく牛肉は食べないとかはしている。他に何か取り組んでみようかな。

思い返せば、私が小学生の頃は、ダイオキシンとか地球温暖化が話題になった頃だったと思う。学校で出たゴミを焼却炉で燃やしていたが、ある時から掃除中に行っていたその作業はなくなった。焼却炉は使われなくなった。おそらく今はどこの学校にも無いのだろう。

世界的な取り組みとして話題となり、短期的には変化があったわけだが、大人になって状況をみると、少なくともまだ解決していないところがある。きっと少しずつ良くなっている部分はあるのだと思う。でも二酸化炭素については、日本は厳しい。誰もが正しいと思えることなのに、改善に時間がかかっている。むしろ悪化している側面もある。

仮面ライダーBLACKは、それらをも揶揄した作品だった。だからこそ、今回の仮面ライダーBLACK SUNも期待して一気見した。ここからが若干ネタバレありの感想です。笑

社会問題が大いに盛り込まれていた。ただ今作は環境破壊ではなく、差別だ。

なるほど、怪人と戦うわけだから、それは描きやすいなと納得した。設定は現代で、怪人も街中に普通に暮らしている。良い怪人もいるし、悪い怪人もいる。人間も良い人もいるし、悪い人もいるわけだから、同じだよねって世界観だ。その良いと悪い、何が正義で何が悪なのか、というところだと思う。

すごく良いなぁ~と感心したのが、パラレルワールドですかという具合に、40~50年前の回想シーンが、服装とか髪型など当時のトレンドをわざとらしい感じじゃなく撮られていたのが、歴史を見せられていることを自然と受け入れられて、現代についての描写がより深く頭に入ってきた。現代については、リアルの今の日本との対比、というかある種は批判、風刺であり、現実には怪人なんていないのだけれど、人間でありながら怪人の仮面を被っている人はいるかもしれないし、「怪人」というのは比喩であって、別に何かを示唆しているとも受け取れる。

日本人向けなのだけれど、同時に世界も意識していると思う。仮面ライダーの造形デザインはバッタの改造人間をよりリアルにしたにしてはグロさが強い気がするし、ストーリーのシリアスさは、平和ぼけした頭の中がお花畑な人にはとても受け入れられない。戦い方が、打撃と嚙みちぎるのは、まぁそうなんでしょうけど、血しぶきとか、腕がもげるところは、これまでの日本の映像作品っぽくない気がした。バイオレンスが苦手な人は見ない方がいい。

デビルマン的なところもあった。どっちが悪ですか、という部分だ。このくだり自体は、私は個人的には好きなのだけれど、今作は、見ていて辛かった。ネタバレですが、善良な怪人が集団の人間によってフルボッコ吊し上げにされるシーンがある。この事件によって、シャドームーンが覚醒して、人間の敵になってしまう。とにかく、心臓が弱い人は見ない方がいい。

この概念をポップに描いているのが、美女と野獣だよなぁと思う。最後のクライマックスで、野獣の城に、ガストン率いる人間集団が乗り込むシーンがある。その意思決定とテンションの盛り上がり方が本当は恐いことなのに、最後の最後がハッピーエンドだからか、なんかポップに収まっている。ディズニーマジックですね、素晴らしいと思う。

役者さんについては、めっちゃ良かった。配役も演技も見やすかった。キングオブコメディの今野さん、ハマリ役過ぎる笑。そんなお笑いコントやってた気がするし。もはや演技だと思えない笑。デモの先頭で拡声器を持ってヤジ飛ばす感じ、素晴らしいですね。実際にやったことあるんじゃないだろうか笑。

昔でいえば学生運動が流行った時期がある。その雰囲気を現代の設定のデモ活動に似せている演出もリアリティあって良かったなぁ。回想シーンでは、そういったところは描かず現代で、昔の日本のような過激な部分を描いているのは深いなぁと思ったなぁ。その混沌に、途中から先頭に立つ中村倫也さん演じるシャドームーン(秋月信彦)が、めちゃカッコいい。演技に凄みを感じた。演出的には、三島由紀夫っぽさがあった。中村倫也さん、めっちゃええ役者さんですね。

ヒーローより、ヒールの方がカリスマ性が必要なのかもしれない。デモ集団を束ねるときも、ゴルゴム党の体制を変えるときも、信彦についていこうと思わせるカリスマ性を感じた。中村倫也さん、めっちゃええ役者さんですね。

西島秀俊さんのBLACK SUN(南光太郎)も、ずっと枯れてる感じの演技が良かった。一回挫けている、でもまた戦わなければいけないときに、そうそう完全に再起しましたって顔にはならないよなって思う。けっこう完全勝利しない。そこはリアリティなのかな、良かったと思う。まぁ、強いて言うなら、最後のシャドームーンとのバトルは、うーん・・・と、傷の深手のバランスがおかしいのではと思った。

もう、立ち上がれないよね、からのラストファイトはいいのだけど、それにしては、それまでにシャドームーンにダメージを与えられていなかった気がするし、戦い終わった後の2人の会話の表情がアンバランスに見えた。信彦が急に死んじゃうのね、光太郎はなんか元気っぽくない?と見えた。か・ら・の、BLACK SUNがなぜ玉座に座っちゃってます?は、ちょっと私は分からなかったです笑。

結局、テーマは解決したのだろうか、と振り返ると、あまりスッキリはしなかったな。今も差別はあるし、じゃあなぜ無くならないのかを考えると、そういう世界であるということになると思う。人間は一人では他の種と比べれば弱い生命体だ。ただし、集団になると強いという、フィジカルより知恵をもって成すことができる、そうデザインされていると思う。

つまり、集団になれるかがポイントなのだ。「同種なのか」が生きていくために、かなり重要だということだ。それは遺伝子レベルで刻まれているのだろう。共存と分断は終わらないテーマかもしれない。

個人的には、実に皮肉だったシーンが一番印象に残った。ルー大柴さん演じる総理大臣のセリフ。

民意を得られると思うか?思っちゃいねぇよ。この世界のほとんどは民意なしで作られてきてる。そんなこともわからないなら、あいつら一生、野党だな。

「仮面ライダーBLACK SUN エピソード3」, Amazon Prime Video, 2022

集団になると強い。どのくくりで多数派となるか、ということが見えないと勝てない。利害や思想をもって票をかためれば民主主義はハックできてしまう。「人間と怪人も、命は地球より重い、1グラムだって変わらない」といったフレーズが何度も出てくるのだけれど、その平等不平等が、実は問題としてなくて、どちらにとっても、平等なこともあれば不平等になりえる。それがわかる作品。

えっと、だからじゃあ、どうすればいいの?という疑問への一つ答えは、
生きて、戦え」だ。

今日もユウブログに来ていただき、ありがとうございます。
こどもの頃は、会話のシーンで誰かが「BLACK SUN」と呼んでるのを、ずっと「BLACKさん」って、言ってるもんだと思ってた笑。

  • この記事を書いた人

ユウ

人工呼吸管理が好きな臨床工学技士(ME; CE)。十数年の職務経験で、民間病院から県立、国立病院機構の急性期から慢性期医療に従事。東日本大震災の衝撃から一念発起し、米国呼吸療法士プログラムの受けるべく留学するも資金繰りに失敗して途中帰国。でも求めた知識より一緒に過ごしたグローバルかつ多職種の友達が何よりの誇り。趣味は写真。マイブームは禅。医療・健康など少しでも役に立つ発信を心掛けます。よろしくお願いいたします。

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